民主主義の目覚め (シャルリー・エブド より)

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『 民主主義の目覚め 』


2015年8月12日(Charlie Hebdo)

HiroshimaとNagasakiから70年、原子は日本において、お世辞にも人気があるとは言えない。2011年から停止している原発を再稼動しようとする安倍晋三率いる政府は、福島の惨事以来、国民の心を掴めずにいる。国民の不満の種はこれだけではない。それは、原子力問題とは別に、これまで日本が続けてきた平和主義が終わろうとしていることだ。安倍が絶賛する安全保障に関する法案は批判を呼び、路上に繰り出す日本人を増やしている。「日本の春」はもうすぐ? (Patrick Chesnet) 




沖縄の孤独な戦い (Le Monde.fr より)

www.lemonde.fr



沖縄の孤独な戦い


2015年3月25日 (ルモンド紙)

3月23日、沖縄県知事は国に対して、大浦湾(辺野古)における新しい米軍基地の建設作業停止を指示した。昨年11月に就任した翁長雄志は、前知事が出した許可区域外で4トンのコンクリートブロックを投下してサンゴ礁を傷つけたとして政府を非難している。

基地反対派に歓迎され、来週にも建設許可を取り消す可能性もある知事の決定は、続行を強調する官房長官に“遺憾”と表明された。「国と県がぶつかるのはこれが初めてです」と沖縄タイムスの元編集長・ナガモト トモヒロは言う。同紙は、琉球新報と共に反対派県民の声を広める役割を担っている。


警察と衝突

知事の決定は、3月21日に辺野古の海岸で行われた反対集会の後に下された。集会では、カヤックやカヌーなどの小船の上の抗議者たちが、新しい飛行場の建設区域を示すオレンジ色のブイに沿って連なる海上保安庁の船の間を縫うように漕ぎ、約4000人が一緒に抗議の声を上げた。V字型に延びる全長2kmの二つの滑走路を含む、コンクリート製の“航空母艦(基地)”は、200ヘクタールの海陸を覆い隠す予定だ。

米軍海兵隊が寝起きするキャンプ・シュワブの近くでは、建設資材を搬入するトラックを阻止しようと、反対派が虚しさを漂わせながら24時間体制で見張っている。

警察や基地から派遣された警備隊との衝突は頻繁に起きる。警備隊のほとんどはヘルメットなどで顔が見えない。反対派の多くは怪我を負った。「警察の数は僕たちの5倍以上で、暴力が日々エスカレートしています。小船を転覆させようとしたり、不当に逮捕しようとしています。」と話すのは、牧師の金井創(はじめ)。サンゴ礁や新種の貝類、絶滅の危機に瀕しているジュゴンが住む、沖縄の中でも屈指の生態系を壊させないために小船に乗って抗議する反対派の一人だ。

反対派の横断幕の一つにはこんなことが書かれていた。「世界の皆さん、アメリカと日本がしていることをご覧ください。辺野古の自然が壊されてはなりません。」


政府の無関心

前知事の辺野古への埋め立て承認は、沖縄県民には裏切りに映った。そして昨年、県民たちは反対の意思を示し、移設反対を掲げた名護市長が再選、新しい県知事が誕生した。

しかし、3度に渡る官邸訪問にも関わらず、県知事は首相に迎え入れられることはなかった。菅義偉官房長官は、沖縄県民の意向は基地移設計画に全く反映されないとしている。

県民たちは政府の無関心を侮辱と受け止める。「これは差別です。原発に関する国民の意見は分かれているけれど、沖縄は基地移設に明確に反対しているのです。」と参議院議員の糸数慶子は話す。

今のところ(3月25日の時点では)、日本の大手メディアが沖縄の緊迫状態を気にかけている様子はほとんどない。読売新聞は、県知事の行動を“妨害”と批判した。一方、朝日新聞は「沖縄県民が反対しているにも関わらず、国の安全保障政策がなぜ辺野古なのか」と疑問を投げかけている。地方新聞は、自治権も含めた沖縄の実態に、より多くのページを割いている。

沖縄では、19世紀終わりに琉球王国の領土が日本に戻されてからというもの、予備地域の国民とみなされている県民は、基地問題に対して恨みを募らせている。太平洋戦争中にアメリカとの激戦地となった沖縄(日本の総面積の0、6%)は、日本に送り込まれた米兵の3分の2にあたる4万7000人を迎え入れざるを得なかった。なぜか。理由は他のどの県も欲しがらないから。防衛大臣中谷元は、一切厭味のない真顔で答える。

結局、基地は沖縄に留まり続け、県民はそれを受け入れざるを得ない。「私の体には、アメリカ軍による爆撃を受けたときの火傷の痕があります。先祖代々受け継いだ土地を手放すなんて真っ平です。」島袋文子ははっきりした口調で話す。85歳の高齢をものともせず全てのデモに参加してきた彼女は、つい最近、軽い怪我を負った。


非暴力運動

新しい基地が完成すれば、宜野湾市の中心に構える普天間基地が閉鎖されることになっている。基地に隣接する学校の教師たちは、軍機の離着陸の轟音がとどろく度に、授業の中断を余儀なくされている。普天間基地は、3人の米兵が少女を暴行した事件をきっかけに、1995年から移転が計画されてきた。しかし名護市の住民は、市内への移転に反対している。

「私たちは非暴力の活動をしています。しかし政府は私たちの声に耳を貸そうとしません。」と、沖縄平和運動センターを率いる山城博治は言う。「怒りを爆発させないと聞こえないとでも言うのでしょうか」と疑問を呈するのは、名護市議会議員・東恩納(ひがしおんな)琢磨。どちらにしろ、政府の無関心は、《イデオロギーよりアイデンティティー》と先の選挙で県知事が訴えたように、沖縄のアイデンティティーを求める声を強め、県民の経済的自立心を掻き立てるばかりである。